万葉の時代より歌人に愛された有馬の景色
2022年12月28日
有馬歴史散歩
小倉百人一首にも登場する有馬。
紫式部の娘でもある大弐三位の詠んだ和歌に思いを馳せながら、紅葉の有馬を散策しませんか。
古より多くの人々を魅了してきた有馬。日本最古とも言われる歌集「万葉集」にも、有馬を題材にした和歌が残されています。有馬を読んだ和歌の中でも、とりわけ有名なのが小倉百人一首にも選出される大弐三位(だいにのさんみ)の歌です。大弐三位とは、紫式部の娘、藤原賢子(ふじわらのかたこ)のことです。賢子が一六歳のときに母の紫式部は他界。その後、数々の恋愛を経て、太宰大弐正三位・高階成章(たかしなのしげあきら)と結婚し、大弐三位と呼ばれるようになりました。高齢になっても宮廷歌人として活躍した大弐三位は、「源氏物語」や「狭衣物語」の執筆にも関わったという説もあります。
賢子は、紫式部の死後、中宮彰子に仕えていました。「有馬山 猪名(ゐな)の笹原風吹けば いでそよ人を 忘れやはする」。この和歌が詠まれたのは、その頃であると言われています。当時、貴族に恋をしていた賢子。彼女はあるとき、自分の元から足が遠のいていく相手から、「あなたが心変わりしていないか不安です」と綴った手紙を受け取ります。この和歌は、それを受けた賢子の返し言葉です。笹が風でそよそよと音を立てるのにかけて、「そうよ、そうですよ。どうして私が貴男のことを忘れたりしましょうか。お忘れになっているのは貴男の方ではありませんか」と皮肉で返したわけです。
この和歌に登場する「猪名」とは、猪名川のこと。当時、川の両岸には笹原が広がっていたそうです。この歌の他にも、有馬山と猪名はセットで詠まれることがよくあります。「しなが鳥猪名野を来れば有馬山夕霧立ちぬ宿りはなくて」(万葉集第七巻1140番歌)。歌人たちも見たであろう有馬山から猪名川へ抜ける景色は、六甲山の山頂から望めます。有馬温泉から山頂へは六甲有馬ロープウェーで約12分。錦繍に染まる六甲の大自然とともに、和歌に詠まれた有馬の景色をお愉しみください。
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