山田錦

酒米の王様と称され、全国の有名酒蔵がこぞって使用する「山田錦」。その生産量の6割以上を兵庫県が占め、中でも三木市吉川町や加東市東条町といった「特A地区」で栽培されたものは、最高品質として知られています。なぜ特A地区が栽培に適しているのか。その理由は、この地の特異な地形と地質にありました。
酒米に重要なのは、デンプン質からなる大きな「心白」です。心白にある無数の細かい亀裂が麹菌の働きを助け、効率的な糖化を促します。産地の特A地区は、六甲山系の隆起で生まれた盆地状の地形で、昼夜の寒暖差が大きいのが特徴。この寒暖差が稲の成熟期にデンプンの蓄積を促し、理想的な心白を育むのです。また、山田錦は背が高く倒れやすい性質ですが、周囲の山々が強風から守ることも、数千万年前にあった湖に堆積したこの地が適している大きな要因です。
数千万年前には湖だった「神戸層群」の土壌も欠かせません。火山灰由来の粘土層を含むこの土壌は、水はけと保水性のバランスが良く、米の生育に必要な栄養分を逃さずに供給。古代の森の栄養分や火山灰由来の鉄分を適度に含むことも、力強い稲を育てる一因です。
このように特徴的な風土と地質が生んだ唯一無二の山田錦。当館でもこの米で醸した銘酒をご用意しております。兵庫のテロワールが生んだ一杯を、秋の夜長にご堪能ください。