丹波篠山に、ぬくもりを訪ねて

澄み渡る空気に、里山が美しい錦をまとう頃、有馬の名湯へ向かうその前に、少し足を延ばして丹波篠山を訪れてみませんか。そこには、都会の喧騒を忘れさせてくれる、大人のための上質な時間が流れています。
特注の薪ストーブが燃える「小倉カフェ」では、栗や黒豆のスイーツと共に、ゆったりと癒やしの時間を過ごせます。老舗黒豆専門店が手掛けるカフェ「小田垣豆堂」のカウンターで、枯山水の石庭を眺めながらいただく温かい黒豆茶は、心に静寂を運んでくれることでしょう。お茶だけでなく、丹波篠山が誇る四季折々の食材と、黒豆・栗・大納言小豆を使った軽食や、スイーツも評判です。また、城下町の武家屋敷を改装した「岩茶房 丹波ことり」では、中国皇帝にも愛されたという稀少な岩茶を。一杯に込められた奥深い物語が、ゆったりとした時間を紡ぎ出します。
この季節、丹波篠山はまさに味覚の宝庫。中でも、芳醇な香りと上品な甘みが特徴の「丹波黒大豆」はこの土地ならではの旬の恵みです。おせち料理の煮豆はもちろん、お茶やきな粉、多彩なスイーツなど、様々な特産品が街に並びます。強い粘りと滋味深さが特徴の「山の芋」もまた格別。そして、11月中旬に猟期が解禁されると名物の「ぼたん鍋」が旬を迎えます。
濃厚な味噌出汁で煮込む猪肉は臭みがなく、脂の甘みが口いっぱいに広がり、茅葺き屋根の古民家で囲炉裏を囲めば、その味わいは一層深まります。食だけでなく、文化に触れるのも旅の醍醐味です 。11月中旬からは王地山公園などで「紅葉のライトアップ」が晩秋の夜を彩ります。日本六古窯の一つ「丹波立杭焼」の里では、伝統を守る父と新たな感性の子の作品が並ぶ窯元も。暮らしに馴染む器との出会いが待っています。冬が深まる1月には市内の酒蔵で新酒の仕込みが最終盤を迎え、運が良ければ蔵開きで搾りたての原酒を味わえるかもしれません。
美しい風景、五感に響く味覚、そして心に触れる手仕事。里山での心温まる一日を過ごした後は、いよいよ有馬グランドホテルへ。旅の心地よい疲れを、日本最古の名湯が優しく包み込みます。黄金に輝く湯に身を委ね、今日一日の豊かな出会いに思いを馳せる。里山で満たされた心と体が、名湯によって静かに解きほぐされていく。そんな贅沢な時間が、旅のひとときをより一層、彩り深いものにしてくれることでしょう。