毒水と恐れられた炭酸水から生まれた有馬土産・炭酸せんべい
2026年1月5日
有馬・語り帖
炭酸水と薄焼き技術を融合
試行錯誤の末に生まれた名物
有馬土産の代名詞「炭酸せんべい」。そのルーツが、かつて「毒水」と恐れられた水にあったことはご存知でしょうか。明治8年(1875年)、「毒水」と忌避された井戸の水が当館の礎を築いた「中の坊」館主・梶木源治郎の働きかけによって有益な「炭酸水」と判明。これを受け明治40年(1907年)、有馬で貸本業の傍ら「紅梅焼」という駄菓子を作っていた三津繁松が、この炭酸水を使った新しい煎餅造りに着手します。
当初は大阪・慈恵病院長であった緒方惟準氏らの指導を受けますが、「焼き方や焼上がりに納得いくことができず」、開発は難航しました。困った繁松氏は、かつて薄焼きの「よしよしせんべい」を造っていた吉高屋に相談。そこで造り方の手法の教えを受け、決定的な転機となる「薄く焼く焼型」を借り受けます。繁松氏の「炭酸水」という新アイデアと、吉高屋が持っていた「薄焼きの技術と金型」。この二つが融合し、試作を重ねた末、ついに有馬名物「炭酸せんべい」が完成します。病院長であった緒方氏が関わっていたこともあり、卵やバターを使わない炭酸せんべいは、子供や病人用としても重宝され、大正時代には不動の有馬名物として定着していくことになります。
試行錯誤の末に生まれた炭酸せんべい。現在では、そのルーツを受け継ぐ各店が新たな挑戦を始めています。「三津森本舗」は、せんべいをコーヒーに浸した「ティラミス」などのカフェメニューを開発し、若者客の開拓に成功 。一方、「湯の花堂本舗」は、伝統の「一枚焼き」を復活させ、焼きたての瞬間を「賞味期限五秒の生炭酸せんべい」として演出 。SNSで大ヒットを生み出しています。
「毒水」と呼ばれた水が、明治のアイデアと先達の技術によって姿を変え、今もなお進化を続ける炭酸せんべい。有馬の歴史が詰まったこの一枚を、ぜひ現地で味わってみてはいかがでしょうか。
お話しを伺った有馬人
吉田 佳展さん
有馬温泉で明治元年から続く土産物店「吉高屋」の5代目社長。趣味は有馬の歴史研究。

職人が一枚一枚手焼きで作る焼きたての炭酸せんべい。職人気質を今に伝える昔ながらの優しい味です。

大正初期頃の吉高屋

吉高屋初代吉田芳兵衛
元祖・炭酸せんべい誕生
三津繁松が炭酸水での煎餅作りを着想。吉高屋の「よしよしせんべい」の型を借りて試行錯誤を重ね、明治40年に完成させました。その味は今も有馬名物として愛されています。
受け継がれる伝統の味
繁松の「三津森本舗」から「湯の花堂本舗」「泉堂」などが独立。各店が伝統の技と味を今に受け継いでいます。
外国人観光客にも人気のお菓子に
神戸港開港により多くの外国人観光客が来訪。その評判は彼らにも広がり、一軒では製造が追いつかなくなるほどの人気でした。
毒水から名物へ梶木源治郎の功績
「毒水」と恐れられた水の調査を依頼した、「中の坊」館主(当時)。その働きかけにより、良質な炭酸水であることが判明し、名物誕生の礎となりました。
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