かつて「禿山」だった六甲山、百年以上にわたる再生の物語
2026年3月12日
有馬・語り帖
先人たちが取り戻した「奇跡の緑」を未来へ
新緑が目に鮮やかな季節、有馬温泉を包み込む六甲の山々は、私たちに安らぎを与えてくれます。しかし、この美しい緑が当たり前のものではなく、かつてこの地が「禿山」と呼ばれるほどに荒廃し、岩肌がむき出しになっていた事実をご存知でしょうか。江戸時代の画家・若林秀岳が描いた「武庫連山海陸古覧」には、社寺林を除いて樹木がほとんどない六甲山の姿が記録されています。その原因は、人の手による過剰な利用でした。大阪城の築城や戦乱による伐採に加え、神戸・大阪という大都市の燃料需要に応えるための薪炭材の採取、肥料確保のための下草刈りが繰り返され、山は「骨と皮だけ」と言われるまでに痩せ細ってしまったのです。保水力を失った山は脆く、明治12年や19年の豪雨災害では土石流が発生。下流域に甚大な被害をもたらし、荒廃した山はもはや放置できない脅威となっていました。
この危機的状況に、明治政府と地元の人々が立ち上がります。明治33年、本格的な六甲山系砂防事業が始動。しかし、急峻な花崗岩質の岩山への植林は困難を極めました。植林技術や知識が乏しかった当時の人々は、滋賀県への視察や愛媛県の造林事業者の協力を仰ぎ、山腹に石垣を張り巡らせながら、一本一本丁寧に苗木を植えていったそうです。
当初は乾燥に強いクロマツやヤシャブシが選ばれましたが、後に本多静六博士の指導のもと、クスノキやハゼなど18種類の広葉樹も交えた多様な植林計画が策定されました。また、この活動は行政だけにとどまらず、地域住民や学校児童、市民団体も参加する大規模な「六甲山緑化運動」へと発展。現在私たちが目にする豊かな緑は、まさに100年以上の歳月と、無数の人々の血のにじむような努力によって取り戻された「奇跡の森」なのです。
先人たちの尽力により蘇った六甲の森ですが、時は流れ、新たな課題も浮上しています。一斉に植林された木々の高齢化や、手入れが行き届いていないなど、森の健全な更新が妨げられているのです。この状況に立ち向かうのが、多様なボランティアの存在。「森の世話人」や「毎日登山の会」、環境保全に取り組む企業などが連携し、下草刈りや間伐を通して森に光を取り戻そうと汗を流しています。かつて禿山を緑に変えた情熱は、今や多くの人々の手で「守り、育てる」活動へと進化しました。美しく澄んだ新緑を見上げる時、この山を支える無数の想いと、未来へ続く希望の物語を、その眩しさの中に感じてみてください。
お話しを伺った有馬人
神戸市建設局 公園部森林整備 事務所
六甲山の森林保全や登山道の維持、公園管理など、神戸の豊かな自然を守り育てる活動に取り組んでいます。
海と山が織りなす大パノラマ。かつての荒廃から一世紀、緑を取り戻そうとした数多の人々の想いと行動が、この美しい景色を創りました。
六甲山の変遷
美しい緑に包まれた現在の六甲山。かつての荒廃から蘇り、都市と共生するまでの再生の歴史を紐解きます。
江戸時代
薪や肥料として木々が徹底的に利用され、地肌がむき出しの禿山と化した苦難の時代でした。
明治時代
居留外国人がレジャーの価値を見出し、植林事業も始動。荒廃した山に緑と新しい文化が芽吹きました。
明治期には、日本初のゴルフ場建設を皮切りに、山荘や登山道が整備され、近代リゾートの礎が築かれました。
大正~昭和・平成
交通網が整い大衆リゾートへ。国立公園指定を機に、開発から「自然保護との調和」へ転換しました。
現在
緑は蘇りましたが、樹木の高齢化など新たな課題も。適切な保全で、森を次世代へ繋ぐことが現代の使命です。
地域住民等による緑化運動が、山に緑を取り戻しました。今も続く献身的な活動が、この美しい景観を支えます。
地域住民等による緑化運動が、山に緑を取り戻しました。今も続く献身的な活動が、この美しい景観を支えます。
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