淡路・沼島の鱧

かつてハモは大阪湾でもよく獲れ、江戸時代以前には淀川を経由して京都に運ばれていたそうです。現代においては、地元淡路島の南に位置する沼島近海が一大漁場として有名です。別名「ハモの巣」とも言われるこの海域に生息するのは、海底が泥質だからです。鋭い歯を持つ強面のハモですが、鱗が体表に埋没していることもあってお肌はデリケート。海底に荒い砂や岩があると巣となる穴を掘るときに体に傷が付くため、泥質の海底を好みます。
この付近の海底が泥質なのは、西に流れる吉野川が多量の泥を運んでくるからです。高知県と徳島県を流れる一級水系・吉野川は、四国随一の大きさを誇ります。太古の昔には香川県を経由して瀬戸内海に流れ込んでいたそうですが、300万年前の地殻変動によって流れが変化。現在の吉野川北側に中央構造線が発現し讃岐山脈が形成されたことで流路が遮断され、東の徳島側へ流れるようになりました。それによって吉野川の水が流れ出す沼島近海にハモの巣が形成されたわけです。また、森の栄養分を多量に含む吉野川の水はプランクトンも豊富。ハモの餌となるエビやカニが生息しやすい環境になったことも大きなポイントです。生命力が強いことから食べると精が付くとされるハモ。大規模な地殻変動によってもたらされた海の恵みをいただき暑い夏に備えませんか。